我が家に海が来た日(その2)

我が家に海が来た日(その2)

きっかけは東京から大阪に泊まりがけで研修に行っていたときのこと、研修後に仲間と飲みに行くお店に海水魚の水槽がおいてあったことにはじまります。コバルトブルーのスズメダイが泳ぐ水槽を眺めながらお酒を飲んでいると、とても幸せな気分になれるのです。
自宅にもこんな水槽があったらいいなー。そう思っていたときに近くのペットショップで60cmの水槽と濾過装置、そしてスズメダイ6匹のセット販売の広告を見つけてしまったのです。が、現実はそんなに甘くありませんでした。購入したスズメダイは10日ほどの間に次々と死んでいったのです。これで自分の探求心に火がつきました。本屋で調べまくり、信頼の置けそうなペットショップに通い詰めて、ノウハウを学びました。海水魚を飼うためには、海水中に放出されるアンモニアを分解するバクテリアを育てる必要があったのです。
はじめは海水魚が飼いたくてお店に通っていたのですが、ある日ふと、横の水槽を見ると見たこともないイソギンチャクのようなものが….

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ナガレハナサンゴ蛍光グリーン

Q「これは何ですか?」
A「ナガレハナサンゴだよ。」
Q「サンゴって石みたいに硬いんじゃないんですか?」
A「ほら、ここの根もとのところは炭酸カルシウムの骨格でできているよ。だからこういうサンゴをハードコーラルって言うんだ。イソギンチャクのような骨格のないものはソフトコーラルっていう。」
Q「何を食べるんですか?」
A「光合成しているから、ふだんは何も食べないんだ。条件がわるくなると、プランクトンなどを食べるらしい。コハナガタサンゴなんかはクリル(乾燥オキアミ)をあげると3倍くらいにふくらむよ。」
Q「えー、形が変わるんですか!!!」
A「触手が出てきてえさを中央にある口から取り込んで消化するんだ。」

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触手を出したハナガタサンゴ

Q「こっちのグリーンのきれいなのは何ですか?」
A「海キノコだよ。ポリプが開くときれいでしょ。」

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ポリプ(触手)を出したウミキノコ

何と、海の中にもキノコがあったのです。私は瞬く間にサンゴの虜になりました。サンゴは体のなかに光合成するための褐虫藻(かっちゅうそう)を共生させていて、そのために光を当てるとグリーンやブルー、レッド、イエローなど熱帯魚に負けない美しい色のバリエーションがあります。水槽は水量が1トンを越えると別物になるというショップのマスターの言葉を信じて、60cmの水槽から、いきなり120x90x60cmの水槽をリビングルームに導入することにしました。ここが普通の人には理解できないところなのですが、貴重なサンゴを無駄に死なせないためにも、できるだけ良い環境で飼いたいという思いからでした。
ベランダに巨大な濾過槽とクーラーを置き、壁に穴を開けパイプで海水が行き来できるようにしました。海水は500リットル入る農業用のカクタンというものを用意し、ベランダで人工海水を作れるようにしました。家族にはあきれ果てられましたが、サンゴの美しい色や海水を吸い込んで大きくふくらみ、触手を伸ばす様子は見ていて飽きませんでした。そうこうしているうちに、我が家の水槽は専門誌にも取り上げられるようになりました。

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一番感激したのは、サンゴの産卵の様子を目撃できたことでした。水槽の中にあっても、サンゴは満月の大潮の時期をきちんと知っていたことに限りない生命の神秘さを感じました。日照時間でもなく、水温でもなく、遺伝子に刻まれた体内時計と月と地球の重力変化によって産卵が起きたとしか考えられません。
次回はいろんなサンゴたちをご紹介しましょう。(その3へ続く)

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